冬の日

あなたを差し置いて幸せになんてなりたくないね、心の中はいつも冬の日。雪の代わりに思い出が降る、付かず離れずのまま終わる日々。

わたしは16歳で外に出た日から変わらない場所から世界に視線を向けていて、病質や観念も変わらず携えていて、けれど変わったことといえば、切望という希望を知ったこと。溜息ばかり吐いていた高校生の頃とはちがう、きらめいた思い出をともに携えたこと。憂鬱で遣る瀬無くて寄る辺ないことは変わらずとも、それがわたしにいつも寄り添い、数歩先で渦巻きながらわたしを似たような切望へ導くのだ。けれど望みが複数あるなんて同時に望みの純度も下がってしまい、それはもう切望とは呼べやしない代物なのではないか。わたしはとても単純で、似たような望みにすぐ縋り付いてしまう。そして似たような破綻を迎え、似たような憂鬱に身を窶す。

その流れに歯向かうのが、あなただった。何も始まらないからこそ、何も終わらない。互いを互いの血肉に刻み、けれど決して目を合わせない、あの物語のように、いつまでも破綻は訪れない、或いは繰り返す破綻や消費を乗り越えて乗り越えて乗り越えて、辿り着く確固たる切望の頂、化学反応のように散らす火花、それはわたしたちが募らせた切望のフラクタル。心の中はいつも冬の日。

吐く息白い、劈く日。