かつて

かつて憧憬だったあの冬へ、かつて切望だったあの人へ、かつて共鳴したあの確信へ、

濁りを増して、消えるのではなく覆い隠すよう。わたしの切望は形を変えて、いまも胸元で蟠ってる。その蟠りだけがかつてと何も変わらない苦しさをわたしに与え、その苦しさが己の切実さの証左になる。

わたしの建ててきた塔はあまりにも脆かった。誰も私を私の望むように抱擁できやしないなんて高慢な勘違いだった。自分に信念があると思い込んでいた。それはやすやすと波に飲まれてしまう程度のものだった。

わたしの愛着は狂っているのだと思い知らされて泣いていた。切望の矛先にふれるには身体が邪魔だと思ってきたはずなのに、ドンキの毛布の皺が波みたい。