七月

期待とともに七月に足を踏み入れたはずだったが、部屋の電気を消して自分を隠すばかりの日々だった。誰もいない部屋でも耳栓をして、何も出来ずにベッドに沈みこむ。その度、わたしに通う血液なんてその程度か、と失望する。免罪符を得ようにもお金がかかる。

 

失望とは、乾いた切望のことを言うのだろう。共鳴も情動も輪郭がぼやけて、思い出そうとしてもその頃のとおりに象られることはない。そんなわたしの都合をなぞった形のあなたが夢に放映され、手遅れの心象にあきれ果てる。

 

財布にわんさか入ったプリクラを見返していたら、制服を着たわたしがあまりにキャッチーな顔で笑っているものだから軽く衝撃を受けた。写真なんてこういうものだよな、とも思った。「ありのままの自分が好きなんだって」と揶揄され、そう言い放つあなたがわたしだったならその言葉を否定してかかるのでしょうね、と思いながらただ口角を上げた日の帰り、わたしと他人とのあまりの前提の違いに電車で俯きつづけたこと。そんなことばっかだったはず。波立つ長い髪、真紅の唇、濃い眼差し、そんな容姿に適ったわたしなんてどこにもいなかったのに。

 

わたしは未知を愛している。あなただってあの頃のわたしの未知で、それは盲目でも堕落でも癒着でもなかったよ絶対に。わたしたちが肩書きを背負えなかったことさえ、それはわたしたちの怠慢ではなかった。

 

それでもわたしがまた髪を伸ばすのは、結局あの時が恋しいからに他ならない。

 

 

 

部屋の電気を消して自分を隠すばかりの日々だった。けど、今わたしはだれかに慰められるべきだなんて微塵も思わない。それはあなたによく似た、あなたじゃない未知のおかげなの。