幸福

しあわせという漠然たる言葉を微塵切りにして現れた形を万華鏡にかざす。言葉の研磨がしあわせになるための一歩となり、覗いた先の模様を倣う、見えてしまえば簡単なこと。わたしの幸せはなに?夢、箱庭、定点、切望?夢は何?夢はあなた。定点は何?定点はあなた。箱庭はあなたと。切望はあなたへ。詰まるところの一辺倒。もうティーンエイジの直情的な切実さがなくとも、それは処世術の類いの振る舞いで、一枚剥がせばきっと簡単にあらわになる、ずっと変わらないわたしの切望。あなたという定点に切望しながら箱庭をともに過ごす夢を見る。それがわたしのしあわせ。だからあなた、あなたをもっと見せて、もっとそこにいて、もっと自由に泳いでいて、高らかに叫んでいて、朗らかに笑っていて、ずっとあなたをやめないでいて。映画のようにあなたを魅せて、わたしが登場しない映像を放映し続けて、埋まらない風穴さえ物語にして、あなたは高波、わたしは風、あなたはあなたのやり方で、わたしはわたしのやり方で、しあわせを攫う。わたしたちに生まれわたしたちが出会った、幸福。