切望も汚れて掌にはなにもない。カップラーメンを雑に啜ってひび割れたからだを携える。拒んできた理由は保身を極めたからで、それはあまりにもつまらない。だからそんなつまらない事やめたいのに、どんなに好きだった相手もこの手で裾を掴めやしなかった。だれも留められなかった。

容易く明け透けにできるからだがあったなら。

自分で汚してきた身体はパンドラの箱の中身そのもので、鍵穴に合う鍵を探しつづけているのに、通過するしかなかったかれらは、どんなに互いに望みあったとしてもわたしの鍵ではなかった、だからこそ通過するしか無かった、あれほど望みあっても、あれほど、あれほど。

オルゴールの少女がバイオリンをひく。わたしはそれを掌に乗せて見つめる。やがて奏でるのをやめ、硬直したそれは、わたしのメモリーに保存されたもう関係することのないかれらのよう。

わたしの掌にはなにもない。