わたしは強迫観念にとらわれて白い服を着ては脱いでを繰り返し鏡の前から動けなかった日々を通過して、それができればどんなに楽だろう、と思っていた花柄のワンピースを着るという行為がいまやできるようになった。
わたしが何を言っているのかわからないでしょう。わたしは花柄のワンピースが着られなかった女の子だった。それは自分に似合わないだろうから、だとか、系統の問題じゃなくて、もっと本能的な精神の澱に関係する部分でのはなし。
この文章を打ち込んでいるわたしは今ピンクの小花柄のワンピースを着ている。あの日できなかったことをできるようになった今で、それでもまだできないことを数える。
楽になりたい。もっともっと楽になりたい。
こんなありさまにもかかわらず、わたしは未だ、爪先から髪先まできれいで、歯を見せて笑うことができて、夏に袖のないワンピースを着られる、そういう女の子になる未来をばかみたいに夢想している。
わたしをボロ雑巾のように捻って捻ってあげくの果てに千切りやがったあの日々は呪いだけれど、こんな女の子になろうだなんて夢想せざるを得ない今だって呪いは続いている。
ああ、ああ。ふつうになりたかった。もうなれないとわかっているよ。もうなれないよ。ああ。