六月

ひらひらと過ごした。誰の目にも華やかに映るであろう服を着て、実際に華やかな姿だと思われながら、にこやかに、威圧しないように、彼女たちみたいに過ごした。クラスメイトのひとりはわたしと目が合うといつも口角を上げ少し目を見開く。これがわたしへのミラーリングだと気づいたのは最近だった。


あなたにわたしはどう見えているのだろうと思う。どう見えているかを知りたいというより、この姿を見たあなたという人がなにを感じるのかが知りたい。ひとり本を読んでいるわたしをあなたはどう思う。あなたが貶す男の子と談笑するわたしを。あなたに笑いかけるわたしに、あなたはなにを感じる。そんな自意識ばかりが膨れゆき、自分のどんな振る舞いもパフォーマンスにしか思えなくなる。卑しくて仕方なくなり、机に伏して目を瞑る。この時でさえ、わたしは目を開けばあなたが見える方向を向いている。


彼女たちのようになりたかった。考えの浅さなんか補えるくらいのかわいげがあって、良くも悪くもひとの話なんてすぐに忘れちゃって、芯からひらひらと過ごせるような女の子に。すごい量のタピオカを飲んでみたい。飲みに行く約束はもうしてある。でも、女の子同士じゃない。女の子同士じゃないから、彼女たちと同じにはなれない。


傲慢だから、見たこともない、あなたがひどく顔を歪めた姿を思い浮かべて一人のベッドで悲哀に暮れる。あなたはわたしと笑ってくれる。そんな時を経るたび、あなたがあなたを諦めない理由の欠片になりたいと烏滸がましいことを願う。でもわたしは傲慢だから、あなたのその笑顔を宝箱にしまって、鍵をかけてしまいたいとも思う。


おだやかに生きてるつもりでいたが、朗らかに生きられてないだけだと気づく。だって心が穏やかだったなら突然自転車とびおりて大怪我したくなったり最寄りで降りずにずっとぼーっと電車乗ったままでいたくなったり他人がわずらわしいと思ったりしないはずだから。今日もこころで泣きながら、あからさまな解放に思いを馳せる。差し伸べられた救いを甘受するだけの器をそもそも携えることができていないというのに。結局わたしはわたしのことが一番どうでもよくないので、すべての聞きたいことと伝えたいことを喉に詰まらせて、斜め下からあなたに微笑む。